
- はじめに
- 内容
- Keynote 1:AlmaLinux and the Open Source way(Benny Vasquez氏)
- Keynote 2:ALESCo, corporate contribution, and the way forward(Andrew Lukoshko氏)
- 講演3:国産GPUクラウド事業者から見るOS事情とAlmaLinuxへの期待 (西田有騎氏(さくらインターネット株式会社))
- 講演4:AlmaLinuxを使用した高可用性システムの実装 (小倉崇志氏(株式会社デージーネット))
- 講演5:AlmaLinux実践ガイド著者登壇!GPU搭載HPE ProLiantサーバー最前線 (古賀政純氏(日本ヒューレット・パッカード合同会社))
- 講演6:Linux技術者育成の現場から見たAlmaLinux ― LinuC試験・教材での採用事例と選定理由 (安良岡直希氏、塩谷拓史氏(LPI-Japan))
- 講演7:AlmaLinuxのセキュリティ機能評価と認証 ~FIPS140-3認証、CC認証 取得への取り組み~ (佐野勝大氏(サイバートラスト株式会社))
- まとめ
はじめに
神奈川県川崎市のFujitsu Uvance Kawasaki Towerにて、AlmaLinux Day Tokyo 2026が開催されていたのでコチラに参加してきました。このイベントでは、AlmaLinux OS Foundationの主要メンバーによる基調講演から、GPU活用、高可用性システム、セキュリティ認証、教育分野での採用まで、色々なトピックが取り上げられていました。
イベント概要
- 開催日時:2026年1月23日(金)13:00〜20:00
- 会場:Fujitsu Uvance Kawasaki Tower 26階 Uvance Innovation Studio
- イベントページ:https://almalinux.connpass.com/event/377157/
内容
Keynote 1:AlmaLinux and the Open Source way(Benny Vasquez氏)
AlmaLinux OS Foundation議長のBenny Vasquez氏から、プロジェクトの現状について報告がありました。
主なポイント
- 多数のスポンサー企業に支えられ、コミュニティが拡大中
- AlmaLinuxの需要が継続的に伸びている
- Red Hatのリリースから1週間以内のリリースを目標に運用
- 様々な業界・現場で採用が進んでいる
Keynote 2:ALESCo, corporate contribution, and the way forward(Andrew Lukoshko氏)
Lead ArchitectのAndrew Lukoshko氏から、開発体制とリリースサイクルについて詳細な説明がありました。
リリース体制
- マイナーリリース:Red Hatリリースから1週間以内
- メジャーリリース:2週間以内
- セキュリティデータやOpenSCAPも公開対応
派生ディストリビューション
AlmaLinuxをベースとした以下のようなディストリビューションが展開されているとのこと:
- CloudLinux
- HeliumOS
- StillOS
- OreonOS
また、i686アーキテクチャはネットワーク機器向けに需要があり、継続して提供される
技術的なQ&Aセッション
- Q: btrfsファイルシステムのサポートは継続されるのか?
- A: 2035年まで継続してサポートされる。
- Q: Azureでのステータスページが頻繁に”Under Status”になる問題は?
- A: これはMicrosoft側の問題の可能性があります。AlmaLinux側では問題を認識していないため、技術的詳細を添えてMicrosoftに報告すべき。
- Q: NVIDIAドライバーが別リポジトリになっている理由は?
- A: 様々な理由により、別リポジトリで管理している。
講演3:国産GPUクラウド事業者から見るOS事情とAlmaLinuxへの期待 (西田有騎氏(さくらインターネット株式会社))
さくらインターネットの視点から、国産GPUクラウド事業者におけるAlmaLinux活用について発表がありました。
現状と背景
- これまでGPU利用ではUbuntuが中心的な選択肢だった
- 推論目的でのGPU利用が主流
- AlmaLinuxがNVIDIA GPUをネイティブサポートすることで注目
- 開発体制、将来性、信頼性の観点で評価が高い
GPU利用における課題
- 要求電力の増大:設置環境への投資拡大が必要
- ライブラリ互換性:アーキテクチャ進化に伴い既存ライブラリが使えず処理時間が増大
- 予算文化の影響:組織単位でオンプレミス環境のGPU不足が継続
外資クラウドとの競合
- 複雑な料金体系の問題
- 米国Cloud法による情報閲覧リスクの懸念
AlmaLinuxでの取り組みと成果
- AlmaLinuxでのGPU活用情報はUbuntuの1/1000程度でまだ少ない
- 検証や活用事例の情報蓄積が課題
- NVIDIAネイティブサポート追加により、さくらの環境で動作確認完了
- 価格面でも外資系クラウドと十分競争可能な水準を実現
講演4:AlmaLinuxを使用した高可用性システムの実装 (小倉崇志氏(株式会社デージーネット))
クラスタリング技術の種類
高可用性を確保するため、以下3種類のクラスタリング実装について解説されました:
- HAクラスタ(High Availability Cluster)
- ロードバランシング
- 仮想環境のクラスタ
技術的なQ&Aセッション
- Q: oVirtでのクラスタリングについて、Cockpitとの比較は?
- A: デージーネットでは現在、機能確認を進めている段階。
- Q: AlmaLinux 9.7でDRBDパッケージは提供されているか?
- A: 現在、AlmaLinuxではDRBDパッケージが公式提供されていないため、デージーネット側で独自にビルドして対応しています。公式で提供していただけると非常にありがたい。
講演5:AlmaLinux実践ガイド著者登壇!GPU搭載HPE ProLiantサーバー最前線 (古賀政純氏(日本ヒューレット・パッカード合同会社))
AlmaLinux実践ガイドの著者でもある古賀氏から、HPEのAI・GPUサーバーの取り組みと、AlmaLinux 10 on HPE ProLiantサーバーに関する技術情報が紹介されました。
オンプレミス生成AIの需要
以下の業界でオンプレミスでの生成AI活用ニーズが高まっている:
- 製造業
- 自治体
- 法律事務所
これらの業界では、ローカルLLM、ソブリンAI、経済安全保障を見据えたAI対応が求められている。
技術トピックと最新動向
- 大阪万博での展示:エッジAIサーバ(NVIDIA L4 x2搭載)を出展
- 液冷システムへの移行:GPU搭載サーバーは電力消費と発熱対策のため、既に液冷の方向に進んでいる
- パワーキャップ機能:性能と電力消費のバランスを調整可能(メリット・デメリットを勘案して使用)
- iLO 7:GPUの性能情報などをリアルタイムで確認可能になった。またGPUのファームウェアなども確認出来る
- HPE Compute Ops Management:統合管理ツールの提供
- 大島検証センター:国内での検証環境を用意。そこでこのような環境も確認出来る
重要な注意点
AlmaLinuxはHPEサーバーで正式サポート対象外となっているため、実運用では十分な検証が必要です。
Red Hat Enterprise Linux互換ディストリビューションRed Hat Enterprise Linuxと互換性のある CentOS, Rocky Linux, AlmaLinux, Miracle Linuxと Oracle Linuxでの Red Hat Compatible(互換) kernel利用時は、Red Hat Enterprise Linuxと同様に動作する可能性が高いディストリビューションです。HPEはこれら互換 OSに対して有償保守サポートを提供しておりませんので、コミュニティが提供する情報をもとにしたセルフサポートで利用する必要があります。
講演6:Linux技術者育成の現場から見たAlmaLinux ― LinuC試験・教材での採用事例と選定理由 (安良岡直希氏、塩谷拓史氏(LPI-Japan))
LinuC技術者認定試験について
- LPI-Japanが提供するLinuC(Linux技術者認定)は、コミュニティの協力によって成り立っており、クラウド時代のITエンジニアに求められるシステム構築や運用管理に必要なスキルを証明する認定試験。
AlmaLinux採用の経緯
- CentOS終了後、試験環境・教材ともにAlmaLinuxを採用した。教育・認定の現場でAlmaLinuxを選んだ理由、実際の活用状況、コミュニティベースの技術育成とAlmaLinuxの親和性について解説された。
主な取り組み
- 特定技術実装に依存しない試験設計
- LinuC Open Network素材開発
- サーバ構築標準教科書の改訂
試験開発プロセス
- 試験のスコープを決定
- 出題範囲を作成
- 問題を作成
教材開発で重視している点
- 仕組みレベルでの理解:操作を暗記するのではなく、仕組みのレベルで理解できる内容
- 実践性:学習時に実践しやすく、そのまま実務でも役立つ内容
技術動向の変化と対応
- 生成AI時代における学習パスの変化に対応し、個別技術の深掘りよりも以下の能力が重視されるようになっている:
- システム全体の目的を見通す力
- 領域横断的な理解力
講演7:AlmaLinuxのセキュリティ機能評価と認証 ~FIPS140-3認証、CC認証 取得への取り組み~ (佐野勝大氏(サイバートラスト株式会社))
CentOSの後継サーバー用Linux OSとして採用が加速するAlmaLinuxにおいて、エンタープライズ利用で重要視されるセキュリティ機能が注目されている。国際的な評価・認証規格であるFIPS140-3とCommon Criteria(ISO/IEC15408)認証の概要と取得動向が解説されました。
FIPS140-3認証の重要性
- 広範な利用環境:Linuxは公共機関、クラウド、重要インフラで広く使用されている
- モジュール構造:Linuxの暗号処理はモジュール構造で実装されている
- 業界標準:主要Linuxディストリビューションは既にFIPS140-3対応済み
- セキュリティ要件:セキュア構成やゼロトラストアーキテクチャの必須条件
認証取得状況
- AlmaLinux 9.2:2025年10月28日にFIPS140-3認証を取得
- 無償利用:AlmaLinuxとして無償で利用可能

Common Criteria認証について
- 国際標準規格:ISO/IEC 15408に基づく
- 評価対象:IT製品全体のセキュリティ機能を評価
- 評価内容:製品全体のセキュリティ要件を満たしているかを評価する国際標準


まとめ
技術面での重要な進展
- 安定したリリースサイクル:マイナー1週間以内、メジャー2週間以内
- NVIDIA GPUネイティブサポート:さくらインターネット環境でも動作確認済み
- FIPS140-3認証取得:AlmaLinux 9.2で取得、無償利用可能
- 長期サポート:btrfsは2035年まで継続サポート
エコシステムの拡大
- 国内クラウド事業者:さくらインターネットでの本格採用
- ハードウェアベンダー:AlmaLinux 10 on ProLiantの公式としてはサポートしていないが動作することは確認している
- 教育分野:LinuC試験・教材での正式採用
- 派生ディストリビューション:CloudLinux、HeliumOS、StillOS、OreonOSなど
今後の課題と展望
- 情報蓄積:AlmaLinux + GPUの活用情報(Ubuntu比で1/1000)の拡充
- ハードウェアサポート:PRIMAGYやHPEサーバーなど一部環境での正式サポート拡大
- パッケージ充実:DRBDなど一部パッケージの公式提供
エンタープライズでの価値
- AlmaLinuxは、Red Hat互換でありながら無償で利用できる点、セキュリティ認証取得による信頼性、GPU活用などの要件への対応など、エンタープライズ用途での価値を高めていっている状況。CentOS終了後の移行先として、また新規システムでの採用において、実績と信頼性を兼ね備えた選択肢となっている。
相変わらず堅実なアップデートと、サイバートラストなどの国内でのサポートの拡充、またハードウェアの公式認定の拡充など、いい感じで進んでいるのではないかと思います。
業務ではUbuntuやRocky Linuxの方が多いのですが、公式サポートが揃ってきたことも考えると、今後はこちらを検討するのも有りなのではないかなと思いました。




